教官が不気味な笑みを浮かべている。第二段階に入ってからはさほどきびしい課題はなく、ひたすらMAMMとか車線変更とか首をかくかく動かす練習をしてきたのだが、いよいよたけなわ状態に難関が控えている、ということらしい。
なんでも、波状路は、大型バイクにしかない課題なんだそうだ。どういうのかというと、不均等にならんだ鉄パイプみたいのがうめこまれている段差のある道を、立ち姿勢で、クラッチとアクセルワークで、できるだけゆっくり確実に通過するという課題である。教官が「模範演技」をしてみせてくれる。なるほど、前傾姿勢なのだな立ち姿勢でタンクをしっかり膝ではさんで前に体重かけつつ肘と膝はやわらかく、クラッチは切ったり半クラッチつないだりつなぐ瞬間にアクセルをぐんと開けるそのタイミングは前輪が障害物にぶつかったときだ、というわけだ。
やってみる。
できるわけないよ生まれてはじめてだ。鉄パイプみたいな障害物はたぶん段差5センチくらいなんだろうが、けっこう衝撃が大きい。立ち姿勢というのがこれまた安定しないのだ。がっくんがっくん、クラッチもうまくつながらず大ぶかししたり急進したり、とうとう脱輪だ腰砕けだひさびさにこけてしまった。
ふっふっふなかなか大変だと思うよまあ大型乗るんだったらこのくらいのテクニックは常識だけどね。
くやしい。
こんなことで負けてたまるか。
というようなことがよく考えるとバイク教習を通じてずーーーーっとやってきたことだったんだなと思う。
「下ばっかみない、もう少し視線は遠く、前に体重、肘はやわらかくはじかれないように、クラッチつないでつないでつないでつないで」
いつものように教官の罵声が後ろから追いかけてくる。
視線は遠くかあ。
ふと見上げると、夏の終わりの入道雲。沈みかかった夕日の上にかかってオレンジ色、いや、これはティモールでみたピンクゴールドの夕焼けに近いではないか。思えば大型バイクを思い立ったのもティモールだったよなあ。
大型バイク教習は、ともすると言いようのない郷愁をもたらすものなのである。
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