蚊取りマシーン
これは、何に使うかというと、蚊を撃退するのに使うものだ。
正式な名称はわからないので、「蚊取りマシーン」と呼んでいた。
ごらんのとおり、充電して使うものだ。テニスのラケットのガットにあたる部分が電線になっていて、ここに「高圧電流」が流れているらしい。こいつをふりまわして蚊を追い払う際に、蚊がこの高圧電線に触れるや
「バチっ」
という大音量とともに火花が散り、あわれ蚊は炎となって燃え落ちるのだ。
日本でも夏場に電灯のまわりに高圧電流がながれる網を張り巡らせて集まってきた虫を撃退するマシーンをみかけるが、それの携帯版である。けっこう残酷な感じもするが、こいつを振り回して蚊に命中したときの手ごろなショックと音響で、たいへんに気持ちが晴れるのだった。
蚊だけでなくハエやその他小さな虫にも使うことができる。残念なのは、チナ製のためというわけでもないだろうが、充電がすぐに切れてしまう。1回バチやると、そのご8時間くらいは充電に費やさなければならず、その間蚊の反撃におびえて生活しなければならない。かつチナ製のためというわけでもないだろうが、すぐに壊れてしまう。修理はきかないので買い換えなくてはならなくて、だいたい10ドル以上するのでけっこうな出費になってしまう。
蚊取りマシーンの充電中に、無策でいるわけにはいかない。なにしろ蚊に食われた瞬間から、もしやマラリアになるのでは、デングを発症するのでは、と恐怖におびえなくてはならないのだ。
夜中に蚊の羽音が聞こえたときは悩ましい。見えぬ相手を追い求め部屋の明かりをこうこうとつけ、マシーン片手に血眼で姿を追い求める。けれどもたいていは発見できないのだ。
しかたがないので蚊取り線香をつける。金鳥の夏は日本の夏だが、ディリの夏は緊張の夏だ。
バイゴンという会社?の蚊取り線香は、しかし本当に効いているのかどうかは疑わしい。やたら煙くてにおいもよくない。一晩つけておくと部屋においてあるものがすべて煙くさくなる。仕事に行くときにすれちがった人が煙のにおいがして、さては君もゆうべは蚊とバトルしたんだね、となんとなく肩を抱いてやりたくなる。
バイゴンといえば、もうひとつ、噴射式の殺虫剤があるが、こちらはキョーレツというかモーレツというか効果はテキメンで、5メートルくらい離れたゴキブリも見事に打ち落とすことができる。が、その喜びもつかの間、部屋中に殺虫剤ガスが拡散して、住んでいる人間もなんとなく具合が悪くなる。人体に影響がないとは言い切れない。というかいい影響があるわけがない。
雨期にはムシが増え、湿度は高くそして暑く、ティモール在住の哀れな外国人は蚊の羽音におびえ殺虫剤と蚊取り線香の煙にむせながら、眠れない夜をすごすのである。
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